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わたしは 成年後見人

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沙部 汎

 わが子のために、わたしは成年後見人になった。そのいきさつ、手続きをとりまとめてみました。これから取り組む人たちへのささやかな応援となることを願って。

 

 家族に知的障害を持つひとり娘がいる。今後の事のために、わたしはこの子の成年後見人〈法定後見人〉となった。そのために裁判所への後見審判申立(選任申請)等の全手続きを自分でやってみた。このこと、体験したこと――準備や諸手続き等について――を後に続く人のためにこのページに掲載します。内容は、わが家の限られたケースですが、このページを参照した人の何らかの役に立つこと願っています。

わたしは弁護士や司法書士など専門家ではない。ただの一般人、素人であり、専門家に及ぶべくもないが、まずは素人なりの流儀で書き表してみます。題して「後見開始申立から審判まで」

 最後に補足として、その後の成年後見人活動?を少し加えてみました。

目次

    ※関連記事:ブログ 「光ある記」―(カテゴリー)「成年後見」

はじめに

 わたしが住んでいる市で「地域福祉計画策定市民会議」なるもの設けられ、過去一年余り及ばずながらそのメンバーの一員として関わってきた。ようやく策定素案とテーマが会議の成果としてまとまりつつある。「このまちで築く人の輪、地域の輪――あなたも、わたしも、みんなでできること」 というタイトル素案が生まれた。

 「あなたも、わたしも、みんなでできること」といっても、本当にわたしにできることってあるだろうか? この会議にかかわりながら思案した。。。。あった! ささやかなことであるが、他の人があまりやらないこと、自分なら多少できること、それがこのページです。 

 前 提

 このページの説明を読む人は成年後見制度とはどういうものか、その概要は分かっている、という前提で進行します。成年後見審判の実際の手続きを体験に基づいて記し、これから取り組んでみようと思う人たちの参考に供します。ここで取り上げた事例は、わが家のケース ― 「法定後見人/被法定後見人」 ― についてのごく限られたものです。種々ある中の一例としてとらえていただきたく。

【成年後見人の職務】
本人のために必要な法律行為を行い、本人の財産を適正に維持、管理する。預貯金に関する取引、医療や介護に関する契約など様々な法律について本人を代理する。

■成年後見制度について詳しく知りたい方は以下のサイトをご覧下さい。

成年後見とわが家――後見開始申立から審判まで

 親の願い

 知的障害というハンディキャップを負って生を享けた子を残して先に死ねない、という思いはこのようの子を持つ親として皆同じだと思います。そうは言っても、いまの時代は親が先に死ぬことのほうが多い。

 私たちの最大の心配ごと・関心事は親亡き後のことです。親の気持ちを一言で要約すると、願わくば親亡き後「生涯、グリーン車に乗せて天国まで行かせたい」ということです。そのための備えの第一歩として、まず父親が法定後見人になることにしました。もちろん、これで将来が保障されるわけではありません。まず親たる自分が法定後見人になることが“スタート”という気持ちです。

 成年後見で得ること、失うこと

 成年後見人の選定、すなわち本人(わが子)が被法定後見人として審判されることによって生ずる利害・得失についてあらかじめ納得しておきたい。わたしの体験では、成年後見制度の説明会や資料などにより《得られるもの》については理解していたが、《失うもの》については理解が足りなかった。

得られるもの――なんといっても保護者にとっての《安心感》、いわば保険のようなものだろうか。
  ・代理権 ...入所/通所契約、その他の契約、財産/金銭管理に関しての代理権が成立する。
  ・取消権 ...悪徳商法対策。当人が締結した、当人/保護者にとって不利な契約を取消す。

失うもの――本人の《公民権》が喪失することなど。法的に一人前でないことが確定される。
  ・選挙権 ...被法定後見人の場合は選挙権を失う(※公職選挙法第11条1←民法第9条)。被補助、被保佐人の場合は選挙権はOK?? ※平成25年5月に公職選挙法等が一部改正され、選挙権、被選挙権を有することとなった。
  ・契約締結権その他 ...印鑑証明が受けられない、など。

その他――「失うもと」とはいえないが、財産管理権がある。法定後見人が選任されるまでは、保護者・親などが本人の預貯金を自由に管理・処分できた。

しかし、法定後見人が選任されると、本人の預貯金は他の財産と共に家庭裁判所に申告されるので、以降は親といえども勝手に預貯金を処分できない。用途を記録し、求めに応じて事後報告ではあるが裁判所に報告する責務が生じる。たとえば、被後見人本人名義の預貯金から、保護者・親の用途に使用することはできない。たとえば親だけの海外旅行の費用に当てることは法的には許されない。 もちろん後見人といえども私的費用に使うことはできない。 

障害者自立支援法案との関係――もうひとつ、やっかいな事がある。2005年7月現在国会で審議中の障害者自立支援法との関係がある。これが法案通り成立すると、障害者の負担する費用が、障害者名義の預貯金残高にリンクして定律設定されることになっている。

したがい、親が子の障害者年金には手をつけず、また親の収入から子である障害者本人の将来のために努めて貯蓄した預貯金が多ければ、これからは自立支援の名の下に負担する金額が多くなる。本人名義の預貯金が少なければ定律負担が少なくなる。せっかく法定後見人を選任して本人名義の預貯金も安全に確保したと思いきや、この矛盾! (2005.7.5記)

 成年後見の限界

できない!――親であれば当然できるのに、後見人ではできないことがある。
  ・介護行為のような事実行為(注)
  ・身体に対する強制を伴うこと...たとえば
     健康診断の受診の強制、入院の強制、施設への入所の強制
     介護の強制、教育・リハビリの強制

(注)ここでは「できない!」としてあるが、法令上禁止されているわけではない。ただ親や身内以外の後見人が介護を担当することはほとんどないので分かりやすく表現した。

残された問題
  ・医療行為その他医的侵襲に関する決定 ...後見人は同意権がない、という解釈が一般的。

... 親に代わって後見ができる本当の後見人がほしい! というのが親としての真実の願いです。

(注)親であれば何でも実行してよいというわけではない。人権擁護の面からの配慮も大切。親のほうがかえって被後見人である子の人権を侵害してしまうこともあり得る。

 なぜ成年後見の申立をしたか?

わたしは、なぜ成年後見の申立をしたか。。。

行政・法制対策――施設の入所契約は当人が締結できなければ、後見人が締結しなければ法的にはその契約は無効である。―― という事実を受け止め、今後、法律が厳正解釈・適用されても問題のないように備えた。

親亡き後の対策―― わが家のように一人っ子の場合、親亡き後の後見が一番の問題であり後見の本番である。そのためどのような法的に有効な後見の備えをしておくか現在思いなずんでいるところ。でもまず親がこの法定後見人になるところから始めた。

(この項未完、近日補足予定)

 成年後見審判の流れ

 “我が子の後見人に自分がなります”という申請、すなわち《後見開始審判の申立て》書類を家庭裁判所に提出してから認定=《審判の確定・登記》されるまでの手順は、別掲チャートのようになっています。このチャートは、横浜家庭裁判所関係者が知的障害者保護者を対象とした講演会(2003.11)で配布した資料を沙部汎が再編集したものです。この図で全体の流れを把握できると思います。(印刷する場合は印刷用ファイルをクリックしてください。ただし、PDFファイルで作成されていますので Adobe Acrobat Reader が必要です。)

 裁判所に申立書類を提出してから審判確定まで、わが家の場合は3ヶ月弱でした。(2002年5月申立)わが家のケースは被後見人の兄弟姉妹がおらず、資産もなく、父親が後見人という非常に単純な状況だったので精神鑑定書も必要とされなかったのだと思う。そのためスムーズに全体の流れが進行した。家庭の状況によってこの期間は多少の差はあるようです。関係者が多いと、それだけ親族調査に時間がかかるでしょう。    (注)その後、知的障害A2級までは、精神鑑定は不要となっているようである。 

 実際の手続き、書類について

 まず家庭裁判所に提出する書類から見てみましょう。本人(被後見人)居住地所轄の家庭裁判所に申請相談に行くと、「後見開始申立書」用紙と「後見開始の審判申立について」という手引き書をくれます。この手引書に必要な提出書類一式が記載されているのでこれらを順次取り揃えて申請することになります。

 この手引書を基に、わたしの場合は準備作業を少しでも漏れなくスムーズに進めるために、全書類をリストアップした別掲一覧表(PDFファイル)=自分用のチェックリストを作って進行管理した。これを用意するのに多少の手間はかかりますが、あとは意外と役に立つので自分に使いやすい形の作業用一覧表を作ることをお勧めします。そうして、あわてずあせらずにやり遂げましょう。(注)後述するように、平成16年4月現在、横浜家庭裁判所の場合には、チェックシートが既に用意されています。

書類の入手は? ... 直接出向かないと入手できないものもありますが、インターネットでダウンロードし印刷した書式そのものを使えるものもあります。プリンタの状況などでそのまま使えない場合でも、まず書式を印刷して見るとその後の準備作業がしやすくなります。主要な書類の入手(ダウンロード)先を下に掲げます。

《後見開始申立書》 : 最高裁判所ホームページ(ここをクリックして以下の手順で進む)―「裁判手続き」―「裁判所に提出する書式例集」―「01後見開始の審判」

※最高裁判所のこのページには提出書式の他に「概要及び申立の方法」についての説明が掲載されていますので、正しい最新情報をここで確認してください。

《診断書》 : 精神鑑定書の提出は障害の程度や事情によっては不要な場合もありますが、診断書は必ず提出しなければなりません。診断医に正式依頼するまえに自分で内容を理解しておくのもムダではありません。最高裁判所ホームページにある成年後見制度における鑑定書・診断書作成の手引(ここをクリックして進む)から入手できます。

以上、申立に関する2大書式ともいうべき上記2点を事前にながめておくとおおよその見当がつきます。

後見開始申立ての手引き――横浜家庭裁判所の例

 わたし沙部汎が申立てをしたのは新制度実施後からそれほど年数が経過していない2002年5月でしたので、書類を揃えるのに少し手間がかかりました。その後、わが家の住所地所轄の裁判所[横浜家庭裁判所]では、申立て人の便宜のため手続きの進め方/必要書類入手等に関して大幅に整理・改善されています。

特に横浜家裁でもらえる「後見開始の申立ての手引き」はたいへん分かりやすく書かれています。これまで講演会で話を聞いたり、自分で本を読んだりして苦労した者にとっては、“目からウロコ”という感がするほど良くできています。

以下に紹介する事は、当地域管轄の横浜家庭裁判所の手続き例ですが、横浜家裁管轄以外の人でも、これから申立てをしようと志す人には大いに参考になるでしょう。

◆横浜家庭裁判所版の資料について◆

 地元の講演会で配布された横浜家庭裁判所本庁作成の印刷資料を当ホームページの制作者沙部汎が復刻し、PDF化したものを当ページに掲載する準備をしました。掲載に際して横浜家庭裁判所に転載許可を願い出たところ、残念ながら不許可となりました。(※)

横浜家庭裁判所のサイトに当該資料を掲載するからそこにリンクを貼ってほしい、という回答で、掲載の時期は言明されませんでした。書面で2004年8月9日転載許可願いを郵送し、9月1日に電話で返事が来ました。回答のとおり横浜家裁のサイトに掲載されることを待つしかありません。せっかくの良い資料ですから早急に公式サイトで公開されることを期待しています。

※ということで以下のリンクは外してあります。早急に資料をご覧になりたい方は、横浜家庭裁判所に足を運んで入手してください。


@まず所轄家庭裁判所へ相談に行く [ここでは横浜家庭裁判所]。


すると必要書式一式を渡してくれる。書式一式はA4サイズ用の大きい封筒に入っており、封筒の表側に書類一式の内訳が記されている。裏面にはこれらの書類を準備するためのチェックシート(必要費用の額も記載)が印刷表示されており、実に親切かつ、わかりやすく作られている。

A受取った書式一式中の「後見開始の申立ての手引き」をよく読む。
   @)後見開始の申立ての手引き。。。。表紙、第2〜8ページ
   A)後見開始の申立ての手引き。。。。第1ページ

Bチェックシートにしたがって、順次書式一式を準備する

以上の手順にしたがうと、通常一般の書類手続きができる人であれば、ほとんど問題なく後見開始の申立てができるでしょう。でも身体行動の制約や文字が書き難い、読み難いなどのため自分で申立てができない人は、残念ながら弁護士・司法書士等へ依頼せざるを得ません。この場合は相当額の費用がかかります。

 家庭裁判所がくれる書類1式 ― 横浜家裁の例

1. 後見開始申立ての手引き
2. 申立書
3. 申立書記入例
4. 申立人照会書
5. 「登記されていないことの証明」申請書
6. 診断書/診断書附票
7. 本人照会書
8. 財産目録
9. 判定書申請書
10. 後見人候補者照会書

 「後見開始申立ての手引」 ― 横浜家裁版の内容(項目のみ紹介)

表紙: 「後見開始申立ての手引」  横浜家庭裁判所本庁 平成16年4月版

後見開始審判手続き 流れ図

1. 後見開始とは何か

2. 申立ての手続きについて
  1)申し立てる裁判所
  2)申立てができる人
  3)申立てに必要な書類

3. 申立てからの手続きの進行について
  1)進行手順
  2)申立て前の事情の聴取と申立て
  3)鑑定
  4)成年後見人候補者の調査
  5)関係人の調査
  6)本人の調査
  7)後見開始の審判
  8)後見開始の確定と登記

4. 成年後見人の職務について
  1)財産目録・後見事務計画書の作成
  2)成年後見人の主な職務
    
5. 後見監督について
  1)後見監督とは
  2)後見監督の手続き

以上、A4版全8ページにわたり成年後見制度がわかりやすく、適切に解説されています。

成年後見の課題

 この項を埋めなければならないのだが、なかなか進行できない。生きている大きな課題であり力が足りない。とりあえず、この課題に関係する役に立つサイトを紹介しておきます。

・「困ったぞ! 成年後見人」 ・・・ 実姉の成年後見人になった主婦の実地奮戦記録

・「成年後見記 ― 家族後見からみた成年後見制度 ―」 ・・・ 伯母の成年後見人から見た法制上の問題解決への取り組み詳細記録

・「成年後見制度掲示板(BBS) ・・・ 必見! 様々な課題・ケースが出ています。時間をかけてじっくりと読むことをお勧めします。社会福祉士の団体が運営するサイト。


【お願い】 同労者へ紹介したいサイトがあれば、下記《沙部汎 To:》へメールしてくださいませんか?


その後の“成年後見人”―わが家のこと

 成年後見人に引用符が付いているのは、後見人たる《わたし》自身のことである。自分の怠慢の反省をこめて補足情報を書き記す。わたしが娘の成年後見人になって(審判・選任)から、早や3年経過した(いま2005.10)。その間、親/保護者としてそれまでと同じことをしてきたが、後見人として表立ったことは何もしていない。わが家は、親子の間の成年後見であるので、「成年後見人」の立場や権利を必要とする重要課題が発生しなかった。

 やった事といえば、1年前に家庭裁判所から成年後見人報告を求められ、所定の書式で報告書を提出したこと。幾つかの施設の保護会・家族会において成年後見人についての体験講演をしたこと、そしてこのサイトのページと別のブログ(後見専用ではない)を立ち上げたことしかない。

 ところが、障害者自立支援法の成立が迫って来て、被後見人の財産、特に預貯金の残高が問題となってきた。わが家も娘の郵便貯金の残高を調整する必要が出てきた。そこで先日地元の郵便局へ行き、娘の口座に“手をつけよう”としたところ、思わぬ壁にぶち当たった。この時まで自分が知らなかった事・必要な手続きをしていなかった事が不覚!

 1.郵便貯金のこと

 成年後見人の選任、すなわち本人(わが子)が被法定後見人として審判された後、直ちに手続きをしておくべき事であろうが、全くその必要が来るまで知らなかった。わたしのお粗末。整理不十分ながら書き加えておきたい。

成年後見人の壁  

※1:わが家の場合は、3年前の後見審判の後、何もしていなかった。郵便局でこの事実を知らされ、あわててその日の内に横浜法務局に「登記事項証明書」をもらいに行った。幸い片道1時間くらいの所だったので助かった。

 以上、地元の郵便局窓口氏とのやりとりで、分かった事実であるが銀行預金に関しても同様であろう。あらたに成年後見人になった人は(特に親の場合)は確認が必要である。第三者の場合は、手続きをきちんと進めるために成年後見人を選任するので、もれは起こり難い。しかし、親の場合は親権関係(成人の場合は法的には存在しないが)と違いがないので、どうしても詰めが甘くなってしまう。(2005.10)

 その他

つづく。。。 最近の状況は、ブログ 「光ある記」―(カテゴリー)「成年後見」に記載してあります。

 

Teabreak ...

 重くて固い話が続いたので、ここらで休憩。沙部汎のひとり言です。

 当初このページ《わたしは成年後見人》は自分のウェブサイト《あどないの道》の中のもう一つのテーマのための1ページという位置づけで開始した。 ところが、幸いなことにある程度の来訪者があり、本家の《あどないの道》トップページからの訪問者よりはるかに多くなった。サイトの奥深く置いたのが 今となっては悔やまれる。いまさら表面近く浮上させるのも困難。ブックマークなどに登録していたり、リンクしてくれている人に迷惑をかける。

 訪問者の期待を裏切らないように内容の充実と更新をせまられているような気がしてきた。そこで、まずはページの装いを少し改善してみる。当初の、サイトの中の“普通の1ページ”から“特別な1ページ”として少し格調を高く(落ち着いた暖かい雰囲気に)したつもり。

 いちばん工夫を要したのがページトップのデザイン。既にポータル/検索サイトに認知されているので、あまり大幅な変更は得策ではない。まずは配色変更、ついで手を入れたのがカット(挿絵)。これは当初からの課題であった。テーマがテーマだけにあまり華美なものはそぐわない。「成年後見」をイメージする簡単なイラスト/カットがなかなか見つからなかった。 とりあえず、素材サイトで見つけた人工の花の図柄を借用していた。

 やっとこのたび良いカットを見つけた。それが「蝶結び」の図柄である。これは2匹(頭という?)の蝶が仲良く遊んでいるように見えるし、また蝶「結び」で「成年後見」の関係を結び合っていることも表していると深読みしてひとりで悦に入っている。

 駄文にお付き合いくださり、ありがとうございます。(2005.8)

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